2021年12月6日月曜日

死神的な本。

タロットの絵柄のカバーが掛かった本を購入した話の続きその2です。


力の本は壇蜜さんの日記本。

では死神の本のカバーを取ってみてみましょう…












西川美和さんの「ゆれる」でした。


カバー裏には【死】

キーワード:死 過去に背を向ける 終わり

と書かれています。


この作品、ご存じの方も多いのではないでしょうか。

映画で様々な賞を取った話題作だとは知っていたものの

まだ映画も本も見ていませんでした。一緒にいた友達の感想は

「すごいよ…なんとも言えないけど胸がぐわーってなる!」でした。

それは気になる。私もぐわーっとなりたいと思い購入決定。


あらすじ:

東京でカメラマンをしている弟と、実家の田舎で父と暮らす兄を主軸に、

一人の女性の死をきっかけに様々な想いが揺れ動いていく物語。


登場人物のそれぞれの視点での語りが淡々と続きますが、

物語が進むにつれ固定概念が"揺れて"崩れていき、

最初に感じた人物へのイメージが変わっていくような不思議な感覚があります。

はっきりしない部分や兄弟でも気持ちが分からないところもあり、

そのモヤモヤ感、ヒリヒリとした空気感が物語へ深く引き込みます。


死神のカードは仕切り直しや方向転換、結末や新たなスタート、

環境の変化、終わりや激変、内的改革や精神性の強い出来事の象徴を示しますが

この本のイメージとは当てはまる部分もあり、別のカードともいえる雰囲気もあり。

タロットの解説書を何冊も引っ張り出しながら、

作品について思いを馳せる深い時間を過ごすことが出来ました。


人の死という大きな出来事がなければ気付けなかったこと、

同じ兄弟でも知らなかったことがあるのだと感じます。

兄に至っては各段大きな環境の変化があり、特に死神を連想させます。


私は物語を読んでいて塔のカードの側面もあるのではないかと感じました。

塔は崩壊・衝撃的な出来事・事態の急変、清算や突発的トラブル、

対立や強烈な出来事によって考え方がガラッと変わることも指し示します。

無理して無理して無理してガッシャーン!!!!と壊れる様はまさに塔。


小説の余韻が抜けず、すぐにネットフリックスで映画も観たのですが

最限度の高さに驚かされました。特に兄役の香川照之さんの演技が

恐ろしいほどの表現で鳥肌が立ちました。(あの真っ暗な目は夢に出る)

人によってラストの解釈は違うだろうし、感想も違うかもしれません。

だからこその面白さがある一作でした。


もう昔には戻れない・変わっていくしかないという死神と、

衝撃的な出来事が無ければ気付けなかった事があることを教えてくれる塔。

それぞれの意味が感じられる深い深い作品でした。

良い本との出会いとタロットへの思いがまた深まった

素敵なきっかけに感謝したいと思います。





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